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バンクーバーに移住してかれこれ14年。ひょんなことから、パティシエになりました。日々のできごと、料理、もちろん、スィーツの紹介。


by ralamartin
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私の事 16

まんまと、シェフの罠にはまり・・・今まで作ったこともない、120人分のIndividual Tiramisu を作ることとなりました・・・。さすがのシェフも心配だったのか・・・“どうやってだすの?”と聞いてきました。“少し、時間をください。考えます。”と言いました。私が作ったことのあるティラミスは、正方形の浅い、大きなガラスの入れ物に入れる、ファミリースタイルの、少し柔らかめの、スムーズなティラミス。こっちでよく見かけるような、ゼラチンでがっちり固めたティラミスケーキではありません。そして、ティラミスにゼラチンなんて、邪道!と思っていたので(今でも思ってますダス)、やっぱり私がいつも使っているレシピを使うことにしましたが・・・家で食べるみたいにスプーンですくって、個人個人にお皿に乗せるわけにもいかないしなあ~見た目も悪いし・・・と思い、考えた挙句、“柔らかい生地だから、何か一個一個入れれる、入れ物に入れたらいいんやん!”と単純に思いました。たまたま、クラブには、マルティーニグラスの背が低くなったようなグラス、通称“Kyoto Glass"(←なんで、こう呼ぶのかは謎・・・)がありました。それにスポンジケーキのエスプレッソを浸したのと、マスカルポーネ・チーズのフィリングを層にして入れれば、見栄えもいいし、柔らかい生地のせいで形が崩れることを心配しなくてもいい・・・。ということで、このアイデアをシェフに言い、OKが出たのでそれでいくことになりました。デザートのガーニッシュも、ちゃんと作りましたよ。簡単なものですが、レースクッキー(薄い、レースの模様に見えるクッキー)とフルーツとスパゲッティーを油で揚げたものに粉糖をまぶしたものをティラミスに突き刺して。シンプルですが、なかなかうまくいったと思います。シェフも他のコックも、“これ、おいしいよ~!”と言ってくれたので、一安心。無事、ティラミスたちはお客様の胃の中に嫁入りを果たし・・・お客様からもおいしかったとお褒めのお言葉をいただき、任務終了を果たしたのでした。後で、シェフが “オレがFumiにティラミスを作らないといけない!と言ったとき、あれは半分冗談で言ってたんだよ。” だと・・・。彼は笑いながら言ってました。彼としては、半分冗談、でも半分は本気で・・・やってくれたらいいけど・・・やってくれなかったらそれでいいと思ってたと思います・・・でも、単細胞な私は頼まれると断れないタイプ(←借金の保証人以外はね!)なので、一人でいきり立って、鼻息を荒げながら“女に二言はありません!やります!” と鼻をフンフンと膨らましながら、一人で士気を挙げて盛り上がっていたのでしょう。ホントにやるとは思ってなかったみたいです・・・でも、やってくれたから、シェフとしては嬉しかったようですよ。一回、こうやってやってしまうと、今度からバンケットでティラミスのオーダーがきたら、なぜか私の仕事というふうになりました。でも、もう、褒められちゃったから、調子にのって、“次は何をしようかなぁ~。”と考えておりました。そのころ、うちのクラブでは、ウェディングの宴会をやり始めたころで、これから先もバンケットはウェディングを中心に売っていく方向にありました。多分、いいビジネスだと、そのころのアシスタント・ジェネラルマネージャーが提案したのでしょう。私がそのクラブで働き始めた年から、かなり力を入れて、ウェディングの宴会パーティーのバンケットを売ってました。ウェディングと言えば・・・やっぱ、ケーキじゃんか。クラブの仕事はFairmontに比べて、超ーーーー退屈だったので、私はこれを機会に何か学びたいなと思っていた頃でして・・・じゃあ、ウェディングケーキの作り方を学ぼう!と考えたのでした。思ったら、即、行動の私は、まずシェフに “6月の1ヶ月間、ウェディングケーキのコースをPICAで取りたいと思ってます。そのコースは毎週水曜日にあるので、水曜日にお休みが欲しいのですが・・・”と言うと、“それは、いいじゃないか!いいよ!がんばれよ!”と言って、すんなりOKをくれました。それで、すぐ、そのコースの申し込みをしました。クラスの内容は、主に、ガムペーストという砂糖で作った生地で、花の作り方を学ぶというもの。あと、フォンダントという、これまた、砂糖とジェラチンで作った生地でケーキをカバーするやり方を教わるもの。短い期間でのことなので、基本的なことだけ学びました。写真がどこかにあるはずなんだけど・・・多分、職場・・・また、次回にアップしよう!初めて作ったシュガー・フラワーとか、なつかしい・・・。そんなこんなで、クラブは私がウェディングケーキの技術を学ぶのは大賛成。私としても、チャレンジができてすごく嬉しかったです。学ぶだけじゃなくて、すぐに実践できる、つまりお客様に出せる機会がある!これはもってこいの話でしたよ、クラブだけじゃなく、なによりも私自身に。よそのホテルとかに勤めていたら、こういう機会はなかなか与えてもらえないと思います。コック間のお互いの競争心も激しいし、何よりも、もうすでにそれぞれのホテルには、パティシエがいらっしゃるので、一介のコックが横からそんなことに口を挟むなんて、言語道断!村八分に会いますよ~。でも、クラブはこれまでの何十年間か時間が止まったようなところだったので、あと、年を取っている人が多かったので、私のように野心とかがなく、ただ働いて給料とベネフィットをもらいに来てる人が多かったので、誰も、私がそんな勝手なことを猪突猛進でやってても、気にする人は居ませんでした。褒められたら、調子に乗って伸びるタイプの私は、そのティラミス以来、毎週火曜日にあったディナーバッフェのデザートの一部を、作らせてもらい始めました。お客さんの反応が見たかったのです。デザートバッフェの既製品のケーキの中に、私の手作りのデザートを参加させ、“みんな、何か気がついたかな。違いがわかるかな?”と遠くからお客さんの様子を眺めていたものです。みなさん、“ん?なんか、いつもとは違うものがあるぞ。なんだろう?”と、思っている感じでした。でも、意外に、カナダの人って慎重なんですよね。なかなか新しいものには手をつけない。気にはなっている様子ですが・・・今まであったものの方を食べるのです。だから、作ったものすべてなくなる日もあれば、残っている日もあり、ちょっとガッカリしたこともありました。でも、“手作りで、おいしいものを出し続けていたら、絶対に、いつかは分かってくれる!”という、強い信念があったので、周りの人にはちょっとバカにされましたが、懲りずに出し続けました。そうすると、ある日、今度の8月にうちのクラブで結婚披露宴をするというカップルと家族(イタリア系のユダヤ人)がそこでバッフェを食べられて、なぜか私の作ったデザートを気に入られ・・・特にティラミスがおいしかったと言ってくださり・・・アシスタント・ジェネラルマネージャー宛に “今度の私の結婚式のデザートバッフェが楽しみで仕方がないわ!”とE-mailをされたのでした!コックの私は日頃はデザートバッフェなんて・・・コックの仕事をしないといけないし・・・何より、そんな100人分のデザートバッフェなんて・・・期待されたって、作れるわけないよー!
by ralamartin | 2009-10-04 14:50 | 私の事